「ディグる」は、英語の dig(掘る)を日本語の動詞にした言葉です。おすすめが届くのを待つのではなく、レコード店の箱や資料を自分でめくって、まだ知らない良い音楽を探し当てること。DJ やレコード好きの言葉から広まり、いまは古着やゲームを探すときにも使われます。

ひとことで言うと

  • 意味:一枚ずつめくり、手がかりを一本ずつたどって、良い音楽を掘り当てること。
  • 由来:英語の crate digging(レコード店の箱=crate を掘る)。1980年代、ヒップホップのプロデューサーがサンプリングの素材を古いレコードから探したことと結びついています。
  • 日本語では:もとは DJ の言葉。よく掘る人のことは「ディガー」(digger)と呼びます。
  • おすすめとの違い:おすすめは音楽のほうからやってくる。ディグは自分から取りに行く。手がかりを選ぶのは自分なので、たどった道がそのまま耳に残ります。

レコードの箱から生まれた言葉

crate は、レコードを立てて並べる木箱のこと。レコード店や中古市では、箱に詰めたレコードを一枚ずつめくって探します。これが crate digging です。

この習慣は、ヒップホップと特に深く結びついています。1980年代のプロデューサーは中古店やフリーマーケットで古いレコードを掘り、サンプリングに使えるドラムやフレーズを探しました。この世界では、掘れること自体が一目置かれる腕前でした。1992年にニューヨークで結成されたヒップホップ集団 D.I.T.C. の正式名は Diggin' in the Crates Crew、「箱を掘る連中」という意味です。

日本語の「ディグる」も、もとは DJ たちの言葉だと言われています。楽器を弾かない DJ にとって、誰も知らない良い曲をかけられることは腕の見せどころでした。そこからレコードに限らず、古着やゲームでも、良いものを自分で発掘することを「ディグる」と言うようになりました。

音楽を掘るための5つの手がかり

ディグは運まかせではありません。毎回、何か一本の手がかりをたどっています。

  1. クレジットをたどる。 裏ジャケやライナーノーツには、演奏者、プロデューサー、アレンジャー、エンジニアの名前が並んでいます。気に入った一枚のドラマーやアレンジャーが、ほかにどんな作品に参加しているかを追いかけてみましょう。Discogs のクレジット欄からも順にたどれます。CITY POP 小史:レコードの裏面に沿った名前は、まさに裏ジャケの名前を追った記録です。
  2. レーベルをたどる。 同じレーベルの同じ時期の作品は、同じミュージシャンが同じスタジオで録っていることがよくあります。ひとつのレーベルを知ることは、ひとつのリストを手に入れることです。
  3. ジャンルの源流をたどる。 「この音楽はどこから来たのか」をさかのぼります。たとえばシティ・ポップの源流には、ファンク、ディスコ、ソフトロック、ジャズ・フュージョン、ボサノヴァがあります。どの源流へ進んでも、新しいレコードが待っています。音楽ジャンルマップでは、1,203 のジャンルとその源流の関係を一枚の図にまとめています。
  4. サンプリング元をたどる。 ヒップホップで気に入ったフレーズは、何十年も前のレコードから来ていることがよくあります。原曲を突き止めて、原曲が入ったアルバムを丸ごと聴く。これが crate digging のいちばん本来の形です。WhoSampled のようなサイトで元ネタを調べられます。
  5. 店で掘る。 試聴機、店員さんの手書きポップ、ジャケ買い。どれも立派な手がかりです。レコード展やフリーマーケットに行く前には、レコード展とフリーマーケットでの掘り出し物実践も読んでみてください。

掘ったら、記録しておく

ディグでいちばん失われやすいのは、たどってきた道です。この一枚はどの手がかりから来たのか、次はどこへ行きたいのか。

掘ったレコードは CRATTO に記録できます。バーコードや品番をスキャンすれば Discogs で該当する版が見つかり、レコードはジャンルごとのクレートに自動で並び、Apple Music で試聴もできます。使い方はCRATTOでレコードを管理する方法をご覧ください。

CRATTO のテイストマップは、上の 3 つ目の手がかりをそのままアプリにしたものです。1,203 のジャンルが回る地球儀の上に並び、コレクションにあるジャンルが灯るので、これまでたどってきた道がひと目でわかります。ジャンルを開くと、点線でルーツと影響を受けたジャンルにつながり、カードには必聴アルバムとサブジャンル。気になった一枚はそのままコレクションや欲しいリストに入れて、ルーツをたどって次のジャンルへ進めます。

よくある質問

「ディグる」と「掘る」は違う? ほぼ同じ意味です。レコード好きの間では「レコードを掘る」とも言い、「ディグる」は英語由来の少しくだけた言い方です。

ネットだけでもディグれる? できます。Discogs のクレジット、Bandcamp のレーベルページ、ストリーミングの参加ミュージシャン情報も手がかりになります。大事なのは、次に何を聴くかを自分が手がかりから決めていることです。システムが並べた順番に任せない、という点がディグです。

「ディガー」とは? ディグる人、特にレコードをよく掘る人のこと。英語の digger から来ています。

参考